誰かに見てもらうための、簡単なデザイン

パクリのReason

ひさびさにオリジナル感あふれる記事を書こうと思ったら、題材が「パクリ」だったため何がなんだか分からなくなりました。

ええと、なんとなく今年思ったことを書こうかと。
今年の象徴的事件として挙げられる「2020年東京オリンピックエンブレムパクリ問題」。
私はあれはパクリではないと思ってる派ですが、ずっと前にデザイン職ではない人達との会話でこの話題が出た時に「いやーあれはパクリっしょ!」という意見が出てたので、パクリとかパクリじゃないとかなんでパクリじゃないって思うのかパクリは意図的なのか偶然なのか!?ということを考察してみました。

この問題は、クリエイターなら誰だって他人事ではない問題…のはず…!ほんとに細かく調べれば、世の中には似たようなデザインなんていっぱいあるし、パクリ?みたいな事件が起こりうる確率なんて非常に高いと思うんです。
ほぼデザイン職な人の言い訳なのですが…デザインにあんまり関係ない人とかに、そんな背景を知って欲しくて…知ってほし…ウッ(´;ω;`) 書きました。

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ちなみにタイトルもキャッチ画像もパク…いや、パロディです!!

パクリはダメなのか?

「パクリ」を「人のアイディアや作品を盗用する」という意味で考えるのであれば、答えはダメなのでしょう。
しかし世の中には、元ネタを流用して新たな作品を作ったりすることも少なくありません。
これは「盗んでない(許可をとっている)」から許される場合も多いですが、そうでなくても容認されているケースも多いです。
なんとなーく、「元ネタ側が気分を害しなければOK」な風潮があると思います。こういう場合、許可なしに使用しても、出来た作品が良かったら後からでも元ネタ側が容認してくれることも多そうです。
許可を得てたり容認されてるパクリには「パロディ」とか「オマージュ」とかいう呼び名がついてたりします。パクリと違うのは元ネタ側の許可を取ってたり、元ネタがあることを明らかにしてたり、コミカルに改変してギャグ色を強くしたり…といったところなのですが、同じ流用でも、パクリ・盗作のようなマイナスなイメージをつけず、元ネタを踏まえた上の新しい作品としてむしろプラスイメージが強い流用です。
ちなみに「原案」という、原作に沿ってるのか二次創作なのかよく分からない作品もあります。←New!
許可を取っておらず著作権侵害にあたったり、悪意があったり、お金儲けのためにこっそり使われたりしちゃうと「パクリ」「盗作」という、あまりよろしくない呼び方をされてしまいます。
やってることは全部他作品の流用なのに、手順や意識がちょっと違うと犯罪者扱いになってしまいます。

ただ、その「元ネタ」側も、ほんとにそこが発祥なのかどうなのかを突き詰めていくとかなり怪しい点があるものも沢山あると思うのですが…こういうのを探っていくときっと円環の理に導かれてしまう。

パクったんですか?パクってないんですか?

この明確な基準はそれこそ、その本人のみぞが知るところです。
ただ、似たようなものが出来上がっても「ほんとに偶然出来た」というのは起こり得ます。
「デザインなんてその人の発想によるオリジナルなものでしょ?カブるなんてあるの?」と思われるかもしれませんが、発想はそれぞれでも、人の持つ固定的なイメージや表現するために使うツール(記号や色、書体など)は限定されます。
同じイメージ(固定観念)、同じツールを使うと、あら不思議!違う人が作っても似たようなものができちゃうよ!むしろ同じになり得るよ!こういうことです。

例えば、「BAR MOON」というバーを開店させたいAさんが居たとします。
バーのイメージは「隠れ家的」「おしゃれ」「大人」。
開店準備で色々入り用なのでロゴは自分で作ることにしました。
Aさんは学生時代にパソコンを勉強したことがあり、デザインに関しては素人ですがWordやExcelは使えるとします。家にはOffice搭載のWindowsパソコンがあるとします。
Aさん自身はおしゃれに敏感で、おしゃれなロゴのイメージというものは持っていますが、ロゴは作ったことがないため勝手が分かりません。
あまり凝ってないスッキリしたデザインがいいなと思い、とりあえず作ってみたのがこれです。

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書体は、大体のパソコンには最初から入っているであろう「Times New Roman」を使い、MOONの名前に合うように月のマークを入れました。
色は夜空や大人感、ひっそりした隠れ家を連想させる紺色を採用。これでロゴは完成です。

…これはAさんがオリジナルで作ったロゴですが、これがどこともカブらない…なんてことはきっとないと思います…。
多くの人は夜空の色といったら紺色を連想するでしょうし、MOONにふさわしいイラストといえば三日月を想像するでしょう。
そして使った書体も、どのパソコンにも入っている書体です。
つまりこのロゴはAさんの発想から出来たオリジナルと言いつつも、多くの人が持っている固定観念やツール(書体)の上で成り立っています。
他の人が同じ名前の店やサービスをオープンさせるとか、沢山ある書体の中からTimes New Romanを選ぶとか、そういった起こる確率が低い偶然を重ねないと再現できない事象ではありますが、これと同じものができる要素は誰だって持っているのです…。よって、絶対に起こらないということはないのです…。

今回のオリンピックのロゴに関しても、これと同じような要素が重なったんじゃないかな…と思います。
ロゴに使われてる書体はオリジナル書体っぽいですが、似たような明朝体っぽい書体はいっぱいありますし、文字を重ねるという手法はロゴではよくあります。

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もしも「文字を重ねる」手法が何かのパクリだと言うのであれば、ニューヨークヤンキースや阪神タイガースのロゴも何かのパクリになります。
こうなると若干ツライですよね…これがパクリだったら検挙されちゃう案件がいっぱい出てくるよ。。。

こういうこともあるので「どっかで見たことあるデザイン」が必ずしもパクリだというわけではありません。
似たものができる要素は日常に転がっていますし、ロゴ制作にも決まった手法みたいなのがあったりもします。
ほんとに1からオリジナルで書いたイラストや書体が他所で勝手に使われちゃったらそれはパクリでしょうが…。

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画像引用元アニメ「Classroom☆Crisis」オフィシャルサイト
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

Cを丸で囲んだものを基本としたデザインバリエーションにはこんなものがあります。
これは…パクリではないのでしょうが…似てますよね…。
アルファベットなど元の素材がシンプルなものは、ほんとにめっちゃ変えないとどうしても似てきてしまことがあります…。

固定観念がないと認識しづらい

先にもちょっと述べたことですが、人は「固定観念」を持っています。
デザインをする上では、その「固定観念」を踏まえた上でデザインしないと、何がなんだか相手に分かってもらえないことがあります。
情報、イメージを伝えるためにデザインしているのに、伝わらなかったら元も子もありません…。
どういうことかというと、例えば、信号のイラストを作ってみることにします。

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上のものは、すぐに信号と分かっていただけると思います。
これらをもっとデザイン的に!個性を爆発させてみます。

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…信号って分かりづらいですよね…。言われれば分かるけど、地図とかでこれがそのまま載ってたら一瞬「!?」ってなりますよね。
これは、信号といえば、赤・黃・青の3色の丸が並んでるもの…という固定観念によります。
これが色が違ったり、形が違ったりすると、なんかよく分かんなくなります。
こんなふうに、物そのものを伝えたい場合、そのものの特徴を忠実に描いたほうが良くなります。

デザインは個性的もの、他にはないものを作ろうという考えがあると、こういった固定観念を捨てる必要があるかもしれませんが、それはきっと伝わりにくいものになります。
みんなに伝わるものを作ろうと思うと、固定観念に沿ったものを作るのが一番の近道ですが、固定観念は共通のため、似たようなデザインになってしまう感は否めません…。
これで「パクリ」ではなく、必然的に似たようなものが出来上がってしまうわけですが…これは仕方ないんじゃないかと…。まぁこんなのでパクリって言われる事案は少ないと思うんですけど、これが根幹となってカブってきちゃうことは多いんじゃないかと思います。
まぁ、なんでも他と違えばいいってもんじゃないってことです。

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非常口のマークも、いつも見る左のマークだからこそ「非常口」と分かるのであって、いくら三代目 J Soul Brothersが好きだからって右のようなデザインにしちゃうとイミワカンナイ!です。
もっとも非常口のマークは消防法で変えちゃダメって規定がありますが。
(これはパロディですよと事前に言っておく)
芸術は爆発だ!は正義かもしれませんが、むやみにデザインを爆発させるとえらいことになったりします。

既存の配色に負ける

折角いいの作った!と思っても、配色によっては既存のものに負けてしまって、どこかで見たことのあるもの感になってしまうことがあります。
例えば…

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これも、どうしようもないんじゃないかと思います…なるべく似たような書体と色を避けるしか…。
まぁこの辺ならいいのですが、

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書体と文字は変えていますが、これはアウト…にはならないかもしれませんが避けたほうが無難な気がします。
あああ!せっかくピッタリな配色&良いデザイン考えたのにー!と思っても、大きな事業などで使われていたら使うのをやめたほうがいいかも?しれません…。見てる側からしても関連会社かと誤解を招くかもしれません、
逆に言えば、露出の多いものをデザインして大衆に印象づければ世界を制することができるということでしょうか。プラス思考。
これはパクリとはちょっと違うのですが、色だけで不思議と似てしまうので事案としてご紹介します。

機能性の問題

紙やWebのデザインではあんまりないかもしれませんが、機能性の問題でデザインが自由にできないことがあります。
例えば、栓抜き。

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一番左のものはオーソドックスな栓抜きの形で、これは問題ないと思います。
真ん中のハートは、ちょっと抜きづらいかもしれませんが、多分使えるんじゃないかと。
一番右の剣型のものは…使えませんよね…どうやって抜きゃぁいいんだ…いや抜けるかもしれんけど…きっとやりづらいよね…。

このように、栓抜きとか蛇口のひねるところとか、日常生活に関わる部分には使いやすい形があります。
いくら個性を出そうとしても、色とかは変えられるかもしれませんが、形を変えるとただ使いづらくなるので、この部分でもデザイン的な制限は出てきます。
となると、個性を出そうとしてもやっぱり似たようなものができちゃうわけです。
電話やリモコンのボタン配置とかもあんまり変えないほうがいいですよね。ボタンも押しやすい大きさや形は決まってますから、変えないほうが無難です。

新しく使いやすい形を開発すると「特許」という形で著作権などを保護してもらえることがありますが、すでに生活習慣などでなじんだものはむやみに改変しないほうが良いこともあります。となるとデザインに制限ができちゃうわけですが、同じようになったものをもしパクリだというのであれば、使いづらいものばかりを発表せぜるを得なくなりますね。
リモコンとかはみんな同じような形と色なので、沢山あると何がどれのものだか分かんなくなっちゃいますが、やたら斬新な形や色で使いづらいものよりはマシなのかな?

こんな感じで、思いつく限り言い訳をしてみました。
デザインには色々制約があります。全てが全て自由にできるわけじゃないですし、自由にしてもそれが正義だとは限りません。
以上に書いた制約にも、もっと現実的には材料とかお金とか時間とか、そういう制約もかかることがあります。
その制約のなかで作ると、そのつもりはなくてもパクったように見えてしまうことも出てきてしまいます。

デザインというのは、人に情報を伝えるために作るものです。
他の誰もが作りえないような絵や作品が主体になるのは芸術(アート)であって、それは恐らくデザインとは違うのです…。
誰かと同じものを作らないこと、デザイナーの個性を全面に押し出すことが「デザインする」ということではなく、使いやすさや伝わりやすさこそがデザインの第一段階と言えると思います。
その過程や制約の中でたとえカブってしまったとしても、伝えようとすることが一番伝わりやすい形がそれであるなら、それは容認されてもいいんじゃないかな、と思います。他人が1から描き起こした絵などをそのまま流用するとか、そういったことがないのであれば…。

この辺の境界は、こういう仕事をしている人にしか分かりづらいと思うのですが、こういう背景があるっていうことを分かってもらいたく…なんでもパクリだと言っちゃうのは…そうでもないことだってあるんだよ〜っていうのを書きたかったのです…。
年末のまとめみたいな感じで書いたつもりが、ブームもだいぶ過ぎちゃって何の需要があるのかよく分からない記事ですが、、、。

ちなみに私はパロディが大好きです。
たまに問題になる妖怪ウォッチとかおそ松さん…好きだけど…あかんのかな…。

それでは!Have a nice design!!